守る-もしもの時の安全のために- 安全を守る自動車性能評価試験結果を公表します 安全な車選びをお考えの方へ ・自動車アセスメント・チャイルドシートアセスメント

衝突試験の概要

試験方法

フルラップ前面衝突試験

市販の乗用車は、衝突した場合を想定し、乗車中の人のけがを軽減する構造・装置を持っています。これらの安全対策を評価する試験方法は、現実の事故に近いものであること、データの信頼性が高いことなどが求められます。
 この試験では、運転席と助手席にダミーを乗せた試験車を時速55kmでコンクリー卜製の障壁(バリア)に正面衝突させ、衝突時のダミーの頭部、頚部、胸部、下肢部に受けた衝撃や室内の変形をもとに、乗員保護性能の度合いを5段階で評価しています。
 平成29年度までは助手席のダミーは男性を模擬したもので試験を実施していましたが、平成30年度より助手席に乗せていた男性ダミーを小柄な女性ダミーに変更し、試験を実施しています。
 この衝突試験は、時速55kmの事故を模擬していますが、前面衝突事故のほとんどはこの衝突試験の速度以下で起きています。一方、衝突速度が非常に速い場合、衝突相手が車体の大きいトラックなどの場合、シートベルトをしていない場合などには、この衝突試験による評価はあてはまりません。
 また、衝突試験の結果は、試験車の質量が同程度の場合に限り比較が可能です。オフセット前面衝突試験でも同様の考えとなります。

フルラップ前面衝突試験(運転席)及びオフセット前面衝突試験(運転席)用ダミー
「ハイブリッドⅢ」と呼ばれるダミーを搭載しています。このダミーは米国で開発されたもので、大人の男性(身長175cm、体重約78kg(付属物を含めた試験時の質量は約85kgとなります。))を模擬したものです。

オフセット前面衝突試験

運転席と後部座席にダミーを乗せた試験車を時速64kmでアルミハニ力ムに運転席側の一部(オーバーラップ率40%)を前面衝突させます。そのときダミーの頭部、頚部、胸部、腹部(後部座席に限る。)、下肢部に受けた衝撃や室内の変形をもとに、乗員保護性能の度合いを5段階で評価しています。
 平成20年度まではダミーを運転席及び助手席に乗せて試験を実施していましたが、平成21 年度より助手席に乗せていた男性ダミーを小柄な女性ダミーに変更し、後部座席に乗せて試験を行っています。
 フルラップ前面衝突試験が主に乗員を保護する拘束装置(特にエアバッグ、シートベルトなど)を評価するのに適しているのに対し、オフセット前面衝突試験は衝撃を車体の一部で受けるため、ダミーへの衝撃はフルラップ前面衝突に比べ弱いものの車体変形が大きく、変形による乗員への加害性の評価に適しています。
 なお、この衝突試験は物理的な換算により、フルラップ前面衝突試験と同様に時速55km程度の事故を模擬していますが、現実の衝突事故のほとんどはこの速度以下で起きています。


後部座席用ダミー
フルラップ前面衝突試験(助手席)及びオフセット前面衝突試験(後席)用ダミー
フルラップ前面衝突試験(運転席)及びオフセット前面衝突試験(運転席)用ダミーと同様の種類の「ハイブリッドⅢ」の小柄な大人の女性(身長150cm、体重約49kg(付属物を含めた試験時の質量は約54kgとなります。))のダミーを搭載しています。
前面衝突事故形態別割合図(フルラップ前面衝突、オフセット前面衝突)

側面衝突試験

自動車の衝突事故における乗員傷害のうち、前面衝突に続き傷害程度の大きな衝突形態として側面衝突があります。ここでは、原則、運転席にダミーを乗せた静止状態の試験車の運転席側に、質量1,300kg(平成29年度までは950kg)の台車を時速55kmで衝突させます。そのときダミーの頭部、胸部、腹部、腰部に受けた衝撃をもとに、乗員保護性能の度合いを5段階で評価しています。
 この台車は前面の衝突部分に自動車の前面に見立てた一般的な乗用車と同様な固さを持つアルミハニカムの衝撃吸収部材を取り付けてあります。
 また、平成20年度から平成29年度までは、サイドカーテンエアバッグの装備された車両について、展開状況及び展開範囲についての評価をしていました。これは欧州等で実施されているポールによる側面衝突試験を代替するものと考えられています。

側面衝突試験用ダミー(平成30年度から)
「WorldSID(ワールドシッド)」と呼ばれるダミーを搭載しています。このダミーは、従来よりもより人間に近づけて開発された側面衝突試験用ダミーで大人の男性(身長175cm相当、体重約74kg)を模擬したものです。
側面衝突試験用ダミー(平成29年度まで)
「ES:2」と呼ばれるダミーを搭載しています。このダミーは、ヨーロッパで開発されたもので大人の男性(身長170cm、体重約72kg(付属物を含めた試験時の質量は約78kgとなります。))を模擬したものです。

※サイドカーテンエアバッグ(SCA)とは、側面衝突時に乗員の頭部を保護することを目的とするものであり、ルーフレール等に格納され、側面衝突時に気嚢が膨らむことにより、主に車体のAピラーからルーフレールに沿ってCピラー付近まで展開するエアバッグです。

後面衝突頚部保護性能試験

自動車の衝突事故における乗員傷害のうち、後面からの衝突が乗車中の事故形態の中で最も多く、その傷害のほとんどは頚部の傷害となっています。
 ここでは、後面衝突を再現できる試験機を用い、衝突された際に発生する衝撃(速度変化、波形等)をダミーを乗せた運転席又は助手席用シートに与えます。そのときの頚部が受ける衝撃をもとに、頚部保護性能の度合いを5段階で評価しています。
 この試験は同一質量の自動車が停車中の自動車に時速約36.4km で衝突した際の衝撃(速度変化時速20.0km)を再現したものです。ただし、この試験における評価と実際の後面衝突事故は、衝突速度が相違する場合、質量の相違する自動車に後面から衝突された場合や乗員の乗車姿勢・体格、座席の調整位置の相違により異なることがあります。
 なお、平成21年度から平成23年度は、速度変化を時速17.6kmで実施していました。

後面衝突のイメージ図
後面衝突頚部保護性能試験用ダミー
「BioRID Ⅱ」と呼ばれるダミーを搭載しています。このダミーは、後面衝突試験用に開発されたもので、「ハイブリッドⅢ」に近い(身長175cm、体重約78kg(付属物を含めた試験時の質量は約85kg となります。))仕様になっています。

評価方法

それぞれの試験ごとに次に記載する方法により得点を算出し評価します。

フルラップ前面衝突(運転席)とオフセット前面衝突(運転席)試験の点数の出し方(平成30年度から)

頭部、頚部、胸部、下肢部のダミーの傷害値を計測し、欧米等の自動車アセスメントで用いられている点数換算関数を用いて各部位4点満点で点数化します。車体変形量を計測し同様に0~-1点まで点数化します。傷害値の点数から車体変形量の点数を引き、それに事故実態を踏まえた重み係数を掛け合わせて各部位ごとの総合点数を算出します。そのうえで、各部位の総合点数を加算して合計点を算出します。その合計点を5段階で評価します。

フルラップ前面衝突(運転席)とオフセット前面衝突(運転席)試験の点数の出し方(平成30年度から)

フルラップ前面衝突(助手席)及びオフセット前面衝突(後席)試験の点数の出し方(平成30年度から)

頭部、頚部、胸部、腹部(シートベルトによる骨盤の拘束状態の良否)及び下肢部に受けた衝撃を計測し、調整項目を考慮し、欧米等の自動車アセスメントで用いらている点数換算関数を用いて各部位4点満点で点数化します。それに、事故実態を踏まえた重み係数を掛け合わせて各部位ごとの総合点数を算出します。そのうえで、各部位の総合点数を加算して合計点を算出します。その合計点を5段階で評価します。

フルラップ前面衝突(助手席)及びオフセット前面衝突(後席)試験の点数の出し方(平成30年度から)

側面衝突試験の点数の出し方(平成30年度から)

頭部、胸部、腹部、腰部のダミーの傷害値を計測し、欧米等の自動車アセスメントで用いられている点数換算関数を用いて4点満点で点数化します。この点数に事故実態を踏まえた重み係数を掛け合わせて、各部位ごとの総合点を算出します。そのうえで、各部位の総合点数を加算して合計点を算出します。その合計点を5段階で評価します。

側面衝突試験の点数の出し方(平成30年度から)

後面衝突頚部保護性能試験の点数の出し方

ダミー頚部に発生する傷害を評価するため、主に頭部がヘッドレストにコンタクトするまでの間(フェーズ1)に発生する「頚部のS字変形」を評価する傷害指標として頚部傷害基準(Neck Injury Criterion:NIC)、コンタクト後から「最大後屈」まで(フェーズ2)を評価する傷害指標として頚部荷重・モーメントを計測し、欧米等の自動車アセスメントで用いられている点数換算関数を用いて4点満点で点数化します。この点数に事故実態を踏まえた重み係数を掛け合わせた上で点数を加算し、合計点を算出します。その合計点を5段階で評価します。

後面衝突頚部保護性能試験の点数の出し方

フルラップ前面衝突とオフセット前面衝突(前席)試験の点数の出し方(平成29年度まで)

頭部、頚部、胸部、下肢部のダミーの傷害値を計測し、欧米等の自動車アセスメントで用いられている点数換算関数を用いて各部位4点満点で点数化します。車体変形量を計測し同様に0~-1点まで点数化します。傷害値の点数から車体変形量の点数を引き、それに事故実態を踏まえた重み係数を掛け合わせて各部位ごとの総合点数を算出します。そのうえで、各部位の総合点数を加算して合計点を算出します。その合計点を5段階で評価します。

フルラップ前面衝突とオフセット前面衝突(前席)試験の点数の出し方(平成29年度まで)

オフセット前面衝突(後席)試験の点数の出し方(平成29年度まで)

「前面衝突後席乗員保護性能評価」として、助手席側後部座席に搭載したダミーの頭部、頚部、胸部、腹部(シートベルトによる骨盤の拘束状態の良否)及び下肢部に受けた衝撃を計測し、調整項目を考慮し、欧米等の自動車アセスメントで用いらている点数換算関数を用いて各部位4点満点で点数化します。それに、事故実態を踏まえた重み係数を掛け合わせて各部位ごとの総合点数を算出します。そのうえで、各部位の総合点数を加算して合計点を算出します。その合計点を5段階で評価します。

オフセット前面衝突(後席)試験の点数の出し方(平成29年度まで)

側面衝突試験の点数の出し方(平成29年度まで)

頭部、胸部、腹部、腰部のダミーの傷害値を計測し、欧米等の自動車アセスメントで用いられている点数換算関数を用いて4点満点で点数化します。この点数に事故実態を踏まえた重み係数を掛け合わせて、各部位ごとの総合点を算出します。そのうえで、各部位の総合点数を加算して合計点を算出します。その合計点を5段階で評価します。

側面衝突試験の点数の出し方(平成29年度まで)

結果の見方

衝突試験(フルラップ前面、オフセット前面、側面)評価

衝突試験(フルラップ前面、オフセット前面、側面)評価のレベル得点図

各試験の点数を運転席・助手席・後席の区分ごとにそれぞれ5段階でレベル評価し、各自動車の評価の差が明確になるように、現在の水準を勘案し、12点満点中6点未満をレベル1、それ以上から満点までの間を4等分してレベル2(6.00点以上7.50点未満)、レベル3(7.50点以上9.00点未満)、レベル4(9.00点以上10.50点未満)レベル5(10.50点以上)で表示しています。

衝突試験(フルラップ前面、オフセット前面、側面)評価の得点図

後面衝突頚部保護性能評価 (平成24年度以降の評価)

後面衝突頚部保護性能評価結果の例示

運転席・助手席の区分ごとに5段階でレベル評価し、各自動車の評価の差が明確になるように、現在市販されている自動車の後面衝突頚部保護性能の水準を勘案し、12点満点中6点未満をレベル1、それ以上から満点までを4等分して、レベル2(6.00点以上7.50点未満)、レベル3(7.50点以上9.00点未満)、レベル4(9.00点以上10.50点未満)、レベル5(10.50点以上)で表示しています。

「後面衝突頚部保護性能評価」傷害リスクについて

WAD2+リスクと合計点との関係図

5段階のレベル表示は、頚部に後遺障害レベルの厳しい傷害を受ける確率(WAD2+ リスク)を推定したものです。
 この確率は、現在市販されている自動車の後面衝突頚部保護性能の水準を勘案し、6点未満では約82.7%以上、6.00点以上7.50点未満では約70.8%~82.7%程度、7.50点以上9.00点未満では約55.9%~70.8%程度、9.00点以上10.50点未満では約38%~55.9%程度、10.50点以上12.0点までは約15%~38.0%程度となっています。
 ただし、この傷害確率は、速度変化時速20.0km(同一質量の自動車が停車中の自動車に時速約36.4kmで衝突した際の衝撃を再現)、かつ、乗員が座席に標準の状態で着座している際の傷害値を基に算出しており、実際の後面衝突事故において、衝突速度が相違する場合、質量の相違する自動車が後突した場合や乗員の乗車姿勢・体格、座席の調整位置の相違により異なることがありますので、ご注意下さい。

※WADとはWhiplash Associated Disordersの略をいう。

後面衝突頚部保護性能評価 (平成23年度までの評価)

後面衝突頚部保護性能評価 (平成23年度までの評価)の結果例示
後面衝突頚部保護性能評価 (平成23年度までの評価)のWAD2+リスクと合計点との関係図

平成23年度までは、同一質量の自動車が停車中の自動車に時速約32kmで衝突した際の衝撃(速度変化時速17.6km)を再現したものです。
 運転席・助手席の区分ごとに4段階の色分け及び12点満点中の得点を表しています。さらに、各自動車の評価の差が明確になるように、現在市販されている自動車の後面衝突頚部保護性能の水準を勘案し、12点満点中5点未満をオレンジ色、それ以上から満点までの間を3分割して黄色(5点以上8点未満)、薄緑色(8点以上10点未満)、緑色(10点以上)で表示しています。

「サイドカーテンエアバッグの評価」の方法と評価結果の見方

平成20年度より、側面衝突試験において、サイドカーテンエアバッグ付車両についての評価試験を開始しました。

サイドカーテンエアバッグ評価結果の例示

守る(JNCAP)安全な車選び

自動車アセスメント

過去の試験車はこちらの試験結果一覧表をご覧ください。

チャイルドシートアセスメント

過去の試験機種はこちらの試験結果一覧表をご覧ください。